大きな地震や津波警報が鳴り響くとき、家族で一緒に逃げることは当たり前のように思えます。
しかし、実際の震災では「私はもう逃げない。置いて行け」と言う高齢者が少なくありません。
その言葉に揺れる家族。見捨てられない気持ちと、逃げ遅れる危険性。
災害時に直面する「置いて行くか否か」という葛藤は、想像以上に深刻です。
家族から「置いて行って」と言われた事例
過去の震災でも、多くの証言が残されています。
東日本大震災(2011年)
宮城県石巻市で、高齢の男性が「もう歳だから逃げない」と言い、自宅に残りました。必死に説得した家族も一緒に残り、津波にのまれて命を落としています。阪神・淡路大震災(1995年)
「足が悪いから置いて行ってくれ」と言った高齢者を家族が背負って逃げようとしましたが、瓦礫に阻まれ、力尽きて離れ離れに。助かった家族は「なぜ置いて行けなかったのか」と今も苦しんでいます。熊本地震(2016年)
「避難所で迷惑をかけたくない」と言って残ろうとした高齢者を、家族がどうしても説得できず、逃げ遅れてしまった例もあります。
「置いて行け」と言った人の気持ち
なぜ高齢者は「もう逃げない」「置いて行ってくれ」と言うのでしょうか。
体力に自信がなく、避難途中で迷惑をかけたくない
家や思い出を手放すことへの抵抗
「ここまで生きたからもういい」という諦めの感情
「自分が足手まといになるより、家族だけでも助かってほしい」という思いやり
その背景には、決して「死を望んでいる」わけではなく、家族に迷惑をかけたくない気持ちが大きいのです。
「置いて行け」と言われた家族の気持ち
一方で、家族が直面するのは深い葛藤です。
大事な人を見捨てるなんてできない
置いて行ったら一生後悔する
説得すれば必ず動いてくれると思った
一緒に逃げることが「愛情」だと思った
だからこそ、家族は逃げ遅れ、津波や倒壊に巻き込まれるリスクが高まってしまいます。
「置いて行け」と言われても、その場で即断できる人はほとんどいないのです。
災害時の説得で家族が逃げ遅れる危険性
災害時は、ほんの数分の差が生死を分けます。
「もう逃げない」という高齢者を説得している間に、避難のタイミングを失う。
その結果、家族もろとも命を落とすケースが繰り返されてきました。
防災の知識や避難訓練があっても、実際には感情が判断を鈍らせます。
だからこそ、災害時の説得に頼るのではなく、事前に方針を話し合っておくことが重要です。
まとめ:前もって家族で話し合いを
「置いて行け」と言う高齢者。
「置いて行けない」と迷う家族。
どちらの気持ちも痛いほど理解できます。
けれど、災害は待ってくれません。
だからこそ、平常時に「どうするか」を家族で話し合っておくことが唯一の備えになります。
「逃げない」と言わせないために。
「置いて行けなかった」と後悔しないために。
みんなで生き延びるために…。
参考リンク
– 災害体験談に基づく避難誘導の説得事例(PDF)
https://isss.jp.net/isss-site/wp-content/uploads/2021/03/2020-0703.pdf
– 災害時に避難が遅れる高齢者の心理と家族の準備
https://kaigo.homes.co.jp/tayorini/interview/murata/
– 東日本大震災で避難を拒否した高齢者の体験談(PDF)
https://isss.jp.net/isss-site/wp-content/uploads/2022/06/12-2019-1.pdf
– 阪神・淡路大震災における家族・近隣者の救助の実情
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/h15/bousai2003/html/honmon/hm130300.htm
– 「東日本大震災から学ぶ」広報特集(避難の教訓)
https://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h23/64/special_01.html